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『汽笛茫々として鳴り止まず』を読む-樺太アイヌ強制移住にかかわる詩集の紹介-

この本の副題には「ヒトノイッショウハ汽笛トトモニアル」とあります。大澤榮氏の詩集ですが、この詩集の実に3分の1を占める50頁余が、「詩束対雁茫々(ついしかりぼうぼう) 」として、樺太アイヌ強制移住にかかわる詩と散文が載せられております。「…ダイナミックな律動を口にしながら、北の大地を彷徨(さまよ)い、深い闇の記憶を汲み上げている」大澤氏は、現在恵庭市漁川の袂(たもと)に住み、北海道文教大学で精神看護学領域の教授として活躍されている方です。

平易な言葉で物語性のある詩は、難解な現代詩を読むのとは異なり、すぐに引き込まれてしまいます。「人生の踏切(ふみきり)」に聞く汽笛と共に、強烈に惹きつける人名と固有名詞に突き当ります。アウシュヴィッツ博物館、萱野茂と二風谷アイヌ資料館、小樽文学館と小林多喜二、べてるの家、小熊秀雄と長々忌(じゃんじゃんき)、そして対雁の碑へと続くのです。

江別駅から眞願寺まで歩いて辿る空は
箒で掃いたような彼岸の香を匂わせていた
伺った石堂了正和尚の講話では
札幌の地で見つかった
眞願寺落成を写した当時の写真の紹介と
そこに参集している
樺太アイヌの人びとの息遣いが
動かし難い移住の足あととして呼吸をして
いるものであった
そこから碑(イシブミ)に向かうわたしは
和尚から手書きの地図をいただいて
寺から真っ直ぐに磁石を取って歩いた
その道すがら信号の表示プレートには
「対雁(ツイシカリ)」と刻されていて
その信号を渡った直後から
以下略

札幌正信会発行 法語カレンダー

今年の法語カレンダーは、懐かしいガリ版刷りの挿絵である。
当寺門徒で世話人の竹本美好氏が代表を務め、また同じく門徒である金子桂次郎氏が指導する「江別孔版画同好会」の会員諸氏の作品だという。

なお、この法語カレンダー発行元は札幌正信会であり、45歳までの若手僧侶で組織する会である。会員である当寺住職が絵のあたたかみに魅かれ、同好会にお願いしたというが、ふくじゅ草やかたくりの花、季節の山の景色など、淡くやわらかい色合いをもった作品群である。
手作りの版画と、分かりやすい佛の教えの文字との組み合わせが、多くの人々の感動を呼んでいるに違いない。

版画の技法は、ロウ原紙を鉄筆でなぞり、インクを含ませたローラーで紙に転写する。ロウ原紙にできた目にみえないほどの細かい穴から、インクが浸透するため、淡い色を表現できるというのである。竹本代表は「パソコンが普及している時代だからこそ手間暇をかけた手作りの良さに興味をもってもらえたら」と話している。
また、法語の文字も実に素晴らしい。手作りの絵に、これほど調和する文字があるだろうか。北海道書道展や毎日展でご活躍の覚英寺衆徒神保雨城氏の作品である。

なお、この法語カレンダーは道内を中心に約百五十寺院に配布されているという。竹本氏や神保氏をはじめとして、このカレンダーの作成から配布に携わった多くの方々に、深い感謝の念をもって、有難うございましたとお礼の言葉を申しのべたい。
ちなみに上の法語は当寺住職の作品であり、その他の幾つかの法語も記してみたい。

 
 

浄土真宗札幌組ホームページにて、法語カレンダーの法話を掲載しています。
メニュー覧『法話集』よりご覧下さい。

満ちる恩

柴田隆幸さん(札幌市乗善寺門徒)の『満ちる恩』が、本願寺出版社より刊行されました。著者のお名前をご記憶の方もいらっしゃると思いますが、平成14年度15年度と、法語カレンダーにイラストと法語を手がけられた方であります。思い出していただけましたか。

隆幸さんは、生まれつき脳性麻痺の不自由な身体ではありますが、御法義の篤い御両親に育てられ、2歳半の頃から聞法の縁を持ち、それから今日まで、寺院法座にはほとんど欠かすことなく聴聞を続けておられるということです。

左手に筆を持ち、仕事に打ち込む隆幸さんの写真が、カレンダーの最終ページに載っておりますが、すべての作品は、浄土真宗の信心のよろこびに支えられた作風であります。

イラスト画は、豊かな色彩の草花などの自然、そして親鸞聖人や三蔵法師の事跡などなど、ページをめくりゆくほどに、心うたれ、語りかけてくる無言の言葉に圧倒されます。

次に法語のいくつかを紹介いたしますが、隆幸さんは小学生の頃から、短歌や俳句などの短詩型に親しんでこられたと申します。そして、長い間のご聴聞の中から生まれた法語には、汲みつくしてもやまぬ深い味わいがあり、繰り返し読まされてしまいます。

★仕事する手にも足にも佛ありし
★ありがたき闇のまんまが明るくて
★欲も出る怒りも出ずるこの口にようこそようこそナンマンダ
★咲くも良し散るも良しとてみ手の中

音数律の基本であるという5音・7音も調和的で、温かく、やさしく、韻律感をしっかりと捉えていて、さすがだと思います。
なお、中陰カレンダー『七日七日のおつとめ』(札幌正信会発行)にも、隆幸さんの法語とイラストが使われております。

北海道仏教史の研究

北海道仏教史の研究私たち道民は、アイヌの人々を除いては、すべて本州からの移住者と、その子孫であります。移住の姿は、さまざまな形ではありますが、決して安楽なものではなかったことだけは確かな事実であります。苦痛と悲嘆のなかで、切実に人々が求めたものは、快楽などではなく、神佛ではなかっただろうかと思うのであります。

そんな人々の心のよりどころとなる寺が、どのようにして各地に建てられていったのか。素朴な疑問に答えてくれるのが、本書ではないかと思います。本道への佛教の伝播と、その展開の歴史を、本格的通史としてまとめた意欲作であります。著者はあとがきで、こう記しております。言うなれば本書は「道民の信仰の軌跡」であると…

本書は「中世佛教の伝播」「近世佛教の成立と展開」「近現代佛教の展開」という3部から構成され、分厚い読み応えのある書物であります。

中世・近世の記述は松前・函館等道南地域の主となることは勿論でありますが、近現代については、私たちの住む道央地域の詳述とか、アイヌ民族の改宗に関する内容などに、物足りなさを感じさせました。

ともあれ本道の佛教史に関心を抱かれる方々の必読の書であることを強調して、本書の紹介といたします。

なお、図書室では、佛教書はもちろん、童話全集、絵本、佛教マンガ、文学全集等々取り揃えて、皆様の御来室をお待ちいたしております。またこんな本をそろえてほしいというご要望がございましたら、是非お寺まで声をかけて下さい。

朝には紅顔ありて(あしたにはこうがんありて)

朝には紅顔ありて今回は新刊書の中から朝には紅顔ありて(あしたにはこうがんありて)を御紹介させていただきます。著者は御門主大谷光真様であります。平成15年4月に発行されてから、版を重ねるごとに感動の輪を拡げていると聞きます。深い学識と篤信からくる平明な文体での表現は、まさに珠玉の著作であります。

本書の帯に記された読者の声でありますが、61歳の男性は「第2の人生の扉を開けるきっかけとなった1冊です。これから仏教を勉強してみます」と。また27歳の女性は「この本を読んで、自分が生かされている命を持っているという重みを実感しました」と述懐いたしております。

また、作家の五木寛之氏は「心の乾いた時代にどう生きるか。やさしく、深く、説かれた宝石のような書である。私も常に座右に置きたい1冊だ」と、記しておるのです。

本書151頁より、次の言葉を紹介させていただきます。

御門主大谷光真様…… <春が来た、春が来た、どこに来た…> という童謡があります。春そのものは目に見える物ではありません。水が温み、日差しが明るくなり、桜のつぼみが脹らんで、窓からはいる風が暖かく感じられる…春とは、そうしたはたらきを私たちが感じとって、そこに <来た> ことを知るものです。人によって春を感じる場面や瞬間は、さまざまです、けれども、春の訪れを感じないという人はいません。春という存在は、誰にでも確実にわかるものです。仏様も同じです。仏さまもまた、姿かたちでその存在がわかるものではありません、私たちが仏教の勉強をしたり、お寺へお参りしたり、おつとめをしたりする、そうした仏縁が重なるなかで感じられるようになるものなのです…

鮮やかに印象に残る一片の詩ではありませんか。春の光を窓辺に受けて <宝石> のような本書を手に思索のひとときをお過ごしになられることを願ってやみません。